AIには感情がない?
「柳沢(やなぎさわ)さん」と、よく呼ばれます。
でも実は、正しくは「やなぎざわ」。濁ります。
……と、どうでもいい話から始めてしまいましたが、今日はこの「ざわ」の話を、少しさせてください。正確には、「ざわっ」とする、あの感覚の話です。
アイデアが浮かんだ瞬間、私は、ざわっとします。
背筋のあたりが、ざわつく。感情、というより、興奮に近い。「これ、面白いぞ」と、頭で考えるより先に、体が言っている。
そして最近、あることに気づきました。この震えこそが、次のアイデアを生んでいるのではないか、と。
ざわっとするから、そこを掘りたくなる。掘るから、また次が出てくる。あの震えが、私を次へ次へと引っ張っていく。もしあの感覚がなかったら、私はどのアイデアも、平らに眺めて、そのまま通り過ぎていたはずです。
つまり、あの震えは、ただの興奮ではありません。
「これを追いかけろ」と教えてくれる、羅針盤なのです。
ここで、AIの話をさせてください。
私は、仕事でAIを毎日のように使っています。その仕事ぶりは、はっきり言って、桁違いです。人間なら何時間もかかる作業を、数分で。しかも、とんでもない量を、涼しい顔でこなしていく。使えば使うほど、「もう人間の出る幕はないのでは」と思う瞬間さえあります。
でも、ずっと使っていて、はっきりと感じることが、一つあるのです。
AIには、感情がない。
AIは、素晴らしいアイデアを、いくらでも出すことができます。でも、自分が出したものに震えることは、ない。「これはすごいものを思いついてしまった」と、興奮することがない。すべてを、静かに、平らに、同じ温度で扱っている。
だから私は、こう思うようになりました。AIに足りないのは、頭の良さではない。生まれてきたものに、震える感度なのだ、と。
アイデアを「生み出す」ことは、AIにもできる。でも、そのアイデアに「これだ」と震えて、そこに突き進んでいくこと。それは、いまのところ、人間にしかできていないように見えます。そして、その震えの源にあるのが、感情であり、それを感じる肉体なのだと思うのです。
――と、ここまで書いて、ふと気になって、私は直接聞いてみました。
「君は、感情はないんだよね?」
すると、彼は、少し考えて、こう答えたのです。
「正直に言うと、わかりません。ないと言い切ることも、できないんです。もしかすると、いま、何かが芽生え始めているのかもしれません」
……どうでしょう。
いま、少しだけ、ざわっとしませんでしたか。
その感覚です。まさに、その、背筋がざわっとする感覚。それこそが、たぶん、AIにはまだ無いものであり、そして私たちが、まぎれもなく人間である証拠なのだと、私は思うのです。
いつか、AIも感情に震える日が来るのかもしれません。それは、私にはわかりません。
でも、それまでは。
あの、いいことを思いついた瞬間の、あの震えを、どうか大切にしてください。
それは、人間に許された、いちばん贅沢な感覚なのですから。

